医療ヒーローの時代
前の世代(→社会派医療の原点)が組織そのものを描いたとすれば、2000年代以降の医療ドラマは、その重さに個人の技能で切り込む形を選びました。
『ドクターX』(2012年開始)の主人公はフリーランスの外科医で、大学病院の人事にも権威にも属しません。「私、失敗しないので」という決め台詞は、腕以外に何も持たない人間の宣言です。2012年の最終回は24.4%、2019年の最終回は総合視聴率31.0%で、いずれもその年の民放ドラマで1位でした(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。
『コード・ブルー』(2008年開始)はドクターヘリに乗る若手医師たちを、『アンナチュラル』(2018年)は法医解剖で死因を突きとめる仕事を描きました。後者は野木亜紀子のオリジナル脚本で(→脚本家の時代)、日本の解剖率の低さが物語の前提になっています。医療ドラマの舞台は、この二十年で病院の外へ出ていきました。