月9と恋愛ドラマ
日本のドラマには、世界でもあまり見ない呼び方があります。「月9」。月曜9時、それだけです。作品名でも局名でもなく、放送の枠そのものが、ある種の恋愛ドラマの代名詞になりました。フジテレビがこの枠にドラマを置きはじめたのは1987年4月のことです。
それが本当に強かったことは、数字の並びに残っています。ビデオリサーチの歴代高視聴率ドラマの表を上から眺めると、月曜9時の作品がいくつも入っているのです——『ひとつ屋根の下』37.8%、『ロングバケーション』36.7%、『HERO』36.8%、『101回目のプロポーズ』36.7%(いずれも関東地区・世帯・番組平均)。月曜の夜9時にテレビをつける、という習慣が、この国に本当にありました。
『東京ラブストーリー』(1991)はその入口です。脚本は坂元裕二——のちに「事件より雑談を書く作家」として知られる人の、二十代の仕事でした(→脚本家の時代)。この帯を作った人が、三十年後に同じ帯の反対側で「何も起きない時間」を書いている。日本の恋愛ドラマの背骨は、この一人の書き手をたどるだけでもかなり見えます。
いまも恋愛ドラマは作られていますが、置かれる場所は広がりました。『逃げるは恥だが役に立つ』はTBSの火曜10時、『silent』はフジの木曜10時です。どちらも月9ではありません。枠が名前になるほど強かった時代が終わって、恋愛の物語のほうは、いろんな曜日へ散らばっていきました。