SFファンタジー連続劇
1966年に始まった『スタートレック』がテレビに残したのは、番組そのものより、観客のほうかもしれません。放送は3シーズン79話で終わっていますが、そのあと再放送で若い観客に広がり、コンベンションが生まれ、いまも続く文化になりました。テレビの前に座っていた人たちが、テレビの外で集まりはじめたのです。
この帯が発明したのは「連続する世界」でした。一話完結ではなく、番組が世界を持ち、観客がその世界の細部を覚えていく。1993年の『X-ファイル』はそれを二本立ての構造にします。毎週ちがう怪異を扱う回と、宇宙人をめぐる大きな筋を進める回。作り手のクリス・カーター自身が前者を「モンスター・オブ・ザ・ウィーク」と呼んでいたことが、口述の記録に残っています。
この二本立ての現場に、七年いた脚本家がいます。ヴィンス・ギリガン。毎週の怪異を書きながら、大きな物語が少しずつ動くのを見ていた人が、のちに変化そのものを主題にしたドラマを作ります(→アンチヒーローの時代)。SFファンタジーの水脈とプレステージTVは、この人のところで合流しています。
2004年の『LOST』は、その先へ行きました。謎を積み上げ、観客が考察し、掲示板が満員になる。ただしこの番組は「全部に答えるべきか」という問いも残しました。制作のカールトン・キューズは十年後にこう言っています——「すべての謎に答えようとするのは、失敗への処方箋でした。教科書みたいで、面白くなくなる」。デイモン・リンデロフのほうは「答えの出ない問いに惹かれることを、僕は弁解しません。それが人生だから」。
観客が考察する文化は、ここから『ゲーム・オブ・スローンズ』(→スペクタクルの時代)へまっすぐ流れていきます。
神話の訂正
ファンの手紙運動が『スタートレック』のシーズン3を実現させた
手紙運動そのものは実在します。ビジョー・トリンブルたちがSF大会の名簿をもとに手紙を送り、受け取った人がさらに十人へ回す方法で広げました。NBCがゴールデンタイムに「打ち切りではないので手紙を書くのはやめてほしい」と読み上げたことまで、本人の証言が公式に残っています。ただし近年の研究には、NBCは更新を決める前からファンに「更新した」と思わせる手紙を送っていた、月曜夜への移動と予算削減で番組を弱らせていた、という指摘があり、運動が更新をどこまで動かしたかは「はっきりしない」とされています。「寄与した」までは確かで、「実現させた」は通説です。